中村 孝司 氏中村 孝司 氏

北海道大学大学院薬学研究院 医療薬学専攻 薬剤分子設計学研究室

脂質ナノ製剤における品質特性が機能に及ぼす影響

発表要旨

リポソームや脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle: LNP)に代表されるキャリ型のナノ製剤は、核酸医薬品などの高分子医薬品の開発や抗がん剤などの低分子医薬品の動態改善などの目的で用いられるDrug Delivery System(DDS)技術である。特に、核酸のように自身では薬効を発揮するのが困難な有効成分を医薬品にするためには必須の技術と考えられている。最近、厚生労働省から、「リポソーム製剤の開発に関するガイドライン(平成28年3月28日)」と「核酸(siRNA)搭載ナノ製剤に関するリフレクションペーパー(平成28年3月28日)」が発出された。これらに関連する事業である厚生労働省「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」の中で、我々は平成24年から28年にかけて脂質ナノ製剤の特性解析のための評価法に関する研究および文書化を進めた。本講演では、核酸を搭載した脂質ナノ製剤を中心に、代表的な品質評価法の解説、脂質ナノ製剤の品質特性がその機能にどのように影響を与えるかについて、ガイドラインおよびリフレクションペーパーに照らし合わせて、アカデミアの立場から紹介する。

プロフィール

2010年北海道大学大学院生命科学院博士後期課程修了、博士(生命科学)取得。博士研究員を経て、2011年より北海道大学大学院薬学研究院・助教として研究・教育に携わっている。薬物送達学・腫瘍免疫学を専門とし、ナノDDSを基盤としたがん免疫療法に関する研究を展開している。2015年日本薬学会北海道支部奨励賞、2016年日本薬剤学会奨励賞、2018年日本薬学会奨励賞を受賞した。厚生労働省「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」において、ナノ医薬品の品質評価法に関する研究と文書化に係わった。