菊池 寛 氏菊池 寛 氏

エーザイ株式会社 筑波研究所 エグゼクティブディレクター
[東京大学薬学部非常勤講師、九州大学大学客員教授兼務]

リポソーム製剤の開発とグローバルレギュレーション

発表要旨

私がリポソーム研究に携わった期間は前職から通して35年以上にもなる。当初は夢の製剤と言われたリポソーム医薬品も、現在では既に18品目が世界で上市されて医療に貢献している。臨床試験中のものも多く、今後もその数は着実に増えていくと予想されるが、日本ではまだ3品目しか上市されておらず、海外に後れをとっている(AmBisomeやDoxilにおいては、長いドラッグ・ラグもあった)。その要因の一つに、リポソーム医薬品に限らず、過去において日本は、欧米と比べるとDDS (drug delivery system) 医薬品を開発しにくい環境にあったことが考えられる。既存薬をDDS化した場合の薬価の問題、新規添加物の安全性試験の問題、DDS医薬品に関連するガイドラインが無い問題等、日本の特殊事情が存在していたのも事実である1)。これらの問題は、2003年に私がメンバーとして参加した総合科学技術会議(議長:小泉純一郎元首相)下部組織である「ナノテクDDSワーキンググループ」(関係省庁:内閣府、厚生労働省、経済産業省、文部科学省、農林水産省)において充分に議論された。当時のレギュレーション関係の問題の多くは、その後の厚生労働省始め各関係省庁のご尽力により、現在ではほぼ改善されている。日本におけるDDS医薬品開発には今まさに追い風が吹いているといえよう。
1) 菊池寛ら, Drug Delivery System, 26(2), 99-106 (2011).

プロフィール

1977年 東京大学薬学部薬学科(製剤学教室)卒業
1977年~2007年 第一製薬(株)入社以来、一貫して製剤研究、DDS研究に従事
2007年3月エーザイ(株)に転籍、製剤研究所担当部長、DDS研究に従事
2010年6月 理事就任(2015年3月退任)、製剤戦略担当部長
2015年10月 エグゼクティブディレクター、現在に至る