内田 和久 氏

神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 特命教授・BCRET理事

バイオロジクスの製造・品質管理に関する人材育成の実践と国際貢献

発表要旨

2000年代のはじめは、抗体医薬の開発・製造が国内で充分に行なえず、また、最近ではCovid-19ウイルスのワクチンの製造が国内で充分にできなかったことは記憶に新しい。これらの反省から、国内で製造設備の充実が喫緊の課題であると産官学ともに認識が一致した。そして、経産・厚労両省の施策が打たれ、CMO・CDMOを含めバイオロジクスの製造設備の充実が図られている。一方、最近は、抗体医薬の多様化をはじめ、ウイルスベクターによる遺伝子治療薬、mRNAワクチンや治療薬、さらには細胞医薬とモダリティが広がり、短期間に次々と実用化され、製薬会社もフォローしきれないCMC領域の技術開発が進む。
このような状況で、そこで働く人材供給も並行して課題となる。広範な課題の解決を個社の企業努力で行うことはすでに困難である。そこでは、自前主義を捨て、CMC技術やGMP製造など共有化が可能な部分を非競争領域として、組織連携して対応する必要性が出てきた。
本演題では、これらの状況を整理し、より求められる人材育成の施策へのイントロダクションとしたい。

プロフィール

東京都立大学理学研究科にてマウスやウシの脳の蛋白質解析の研究に携わり、その後製薬企業において長年バイオ医薬品の開発、製造、品質管理業務の第一線にて活躍。
2015年より神戸大学大学院工学研究科 特命教授に就任し、多くの論文執筆の他、豊富な知識と経験を活かしバイオ医薬品製造に関わる人材育成に本格的に取り組む。
2017年には、産官学の協力によりバイオ人材育成を目的として設立された 一般社団法人バイオロジクス研究・トレーニングセンター(BCRET)理事(兼任)に就任。
BCRET理事として、製薬企業の研究・開発担当者のみでなく、国内外の規制当局担当者向けの研修なども行っている。
また、本フォーラム演者の一人である東京理科大学 櫻井信豪教授などとも連携し、日本の製薬産業の発展に寄与している。