平澤 竜太郎 氏

第一三共株式会社 テクノロジー本部 CMC薬事部 CMC薬事第三グループ アソシエイトディレクター

CMC薬事業務のパラダイム転換と専門人材育成の課題

発表要旨

規制産業である医薬品業界においては、「規制要件の的確な理解」と「規制当局との効果的・効率的な合意形成」を担う人材は必須であり、規制業務に精通した人材、すなわち薬事エキスパートの育成は、製薬企業における重要課題となっている。近年、バイオ医薬品や遺伝子・細胞治療製品等の高度なCMC管理を要する製品の台頭に伴い、薬事審査においてCMC関連の指摘を受ける事例や、CMC開発の不備に起因する不承認事例が散見されるようになった。また、低分子医薬品と比較して、その傾向が顕著であることも報告されている。このような状況を背景に、CMC領域の薬事業務を担当する「CMC薬事」の専門性に対する注目が高まっている。一方で、CMC薬事人材の育成については、RAPSなどのグローバル専門団体による取り組みはあるものの、国内業界内での体系的な議論は十分とは言えない。
本講演では、バイオ医薬品や遺伝子・細胞治療製品等のCMC領域おける薬事専門人材の育成について、実際の取り組み事例や直面している課題を紹介する。また、開発初期段階からCMC薬事人材が議論に参画することの意義や、進化する規制環境に対応するためのCMC薬事業務の将来像についても考察してみたい。

プロフィール

2007年に博士(理学)取得後、国立遺伝学研究所、フランス国立研究センター、理化学研究所バイオリソースセンターにて、生命科学分野のアカデミア研究を行う。その後、ベンチャー企業勤務を経て、2015年より医薬品医療機器総合機構(PMDA)や日本医療研究開発機構(AMED)において、薬事審査やレギュラトリーサイエンス、創薬技術調査など医薬品行政の業務を経験する。2022年より第一三共株式会社にて、ADC製品、ワクチン製品等の新規承認申請や市販後変更管理に関わるCMC薬事業務に従事するほか、新規製造施設の立ち上げ議論などにも参画する。また、社外活動として、DIA Japan、日本PDA製薬学会、ICHなどへの参画のほか、創薬ベンチャー企業のアドバイザリーや国家資格キャリアコンサルタントとしての活動も行っている。