細胞培養 FAQ
このページでは細胞培養を行う際によくある質問についてFAQ形式で紹介しています。
PBS(-)はどんな時に使用するのですか?
ピリドキサールをピリドキシンに変更する理由
DMEM を基本とする培地は時間の経過と共に綿様の沈殿を生じるという問題がありました。この沈殿は、鉄イオンが触媒する ピリドキサールと L-システインの反応によって生じます。ピリドキサールをピリドキシンに置き換えたところ、沈殿の形成をかなり押さえることができました。また、FBS を添加して使用する場合、種々の細胞の増殖にも影響がないことが分かりました。 (vol.17, page 75 Paul J. Price, Dale Gruber and Shawn R. Smith)
インキュベータの役割について
細胞培養では温度、湿度、CO2濃度などの正しい増殖条件を安定制御できるようにインキュベータが使用されています。一般的には 28℃(昆虫細胞株)、37℃(哺乳動物細胞株)などの温度でインキュベートし、5~10%の CO2を供給するように設定しています。
また、インキュベータ内は湿度約 95%でカビが生え易い環境です。庫内の水受け皿等に製品番号:S5525(SigmaClean™ water bath treatment)を添加するとカビの増殖を抑制します。
消毒剤について
消毒剤は 4 種類に分類されます。
<次亜塩素酸塩>
ウィルスに有効です。金属を腐食させます。不活性化されるので用事調製が必要です。
一般的な表面消毒には 1,000 ppm、培養で生じた廃棄物には 10,000 ppm で使用します。
<フェノール系消毒剤>
ウィルスには有効ではありません。
<アルコール>
細菌に有効です。有効濃度:エタノールは 70%、イソプロパノールは 60~70%
脱水と固化で消毒を行います。エタノールはほとんどのウィルスに有効(被膜がないウィルスには不適)、イソプロパノールはウィルスには有効ではありません。
<グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドなど>
アルデヒドは刺激剤なので、ご使用には十分にお気をつけください。
グルタルアルデヒドは、次亜塩素酸塩溶液を使用できない遠心分離機の回転筒やステンレス製機材の洗浄に使用可能です。
培地成分について
- 無機塩の役割は、主に細胞の浸透圧の安定、ナトリウム、カリウム、カルシウムの供給による膜電位の制御に役立ち、細胞接着での細胞マトリックスにおいて酵素の補因子として必要になります。
- バッファーには、重炭酸を使用したものと HEPES などの両性イオンを使用する化学的バッファーがあります。重炭酸を使用したものは、CO2 の濃度を 5~10%に維持する必要があるので、CO2インキュベータを使用します。HEPES(製品番号:H4034)は、pH 7.2~7.4 の緩衝能に優れていますが、高価で、高濃度では一部の細胞に毒性を示します。フェノールレッド含有培地の場合、酸性になると黄色、アルカリ性になると紫になります。
- 糖はエネルギーの供給源となります。主な糖はグルコース、ガラクトースですが、マルトース、フルクトースを含有する培地もあります。糖の量が 1 g/L を使用するか 4.5 g/L を使用するかは細胞種によります。基礎培地では 1 g/L です。
- ビタミンは多くの補因子の前駆物質で、特にビタミン B 群は細胞の分裂と増殖に必要です。一般的に使用されるビタミンにはリボフラビン、チアミン、ビオチンなどがあります。
- フェノールレッドは pH 指示薬です。通常の pH 7 付近ではオレンジ色、pH 6.8 以下では黄色、pH 8.4 以上では赤紫色に変化します。細胞培養をすると、細胞が乳酸を出すので培地が黄色になります。
L-グルタミンや重炭酸ナトリウムの不含の理由
L-グルタミンは粉状だと安定ですが、溶液状になると不安定になります。-20℃保存では 2 年間ほど安定ですが、4℃では失活が進み、2 週間ほどしか保存できません。
詳細は、製品番号:G7513(L-グルタミン 溶液)の製品情報やデータシートをご参照ください。
重炭酸ナトリウムは、熱によって炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水に分解します。溶液では放置しておいても徐々に分解していきますが 65℃以上で急速に分解します。 CO2 インキュベータの濃度が 5%の場合には重炭酸ナトリウムは2 g/L、10%の場合には 3.5 g/L を使用する。Hank’s 塩の場合には重炭酸ナトリウムは 0.35 g/L が標準です。
フェノールレッド不含の培地はどういう時に使用しますか?
フェノールレッドはpH指示薬です。MTTアッセイやその他分析をする際にバックグランドが高くなる可能性があります。またエストロジェン作用があることが見出されており、ホルモンの研究をする場合にはフェノールレッド不含の培地が推奨されます。
なぜ HEPES を培地に入れるのですか?
通常の大気組成窒素の閉鎖系で培養する場合、HEPES を加えて pH を緩衝します。まず、何 mM の HEPES を使用するかを決めてから、水酸化ナトリウムで pH 7.2~7.4 に培地を調製して使用します。pH の維持が重要で、重炭酸ナトリウムでは不十分な細胞の場合に有効です。
非必須アミノ酸とピルビン酸ナトリウムを使用するのはどのような時でしょうか?
- 非必須アミノ酸は増殖の速い細胞に使用されます。細胞は非必須アミノ酸を産生していますが、増殖が速いために消費する非必須アミノ酸が上回ってしまいます。そのため非必須アミノ酸を添加した培地を使用します。
- グルコース含有培地はATP産生に依存する増殖で、ピルビン酸ナトリウム含有培地の増殖はTCA回路に依存しています。ピルビン酸含有培地ではグルコース含有培地と比べて乳酸の産生が少なく pH が安定しますので、増殖が速い細胞ではピルビン酸含有培地を使用する場合があります。
血清非働化の理由と方法は?
理由は血清に含まれる補体が活性化し、細胞に障害を与えるからです。そこで、56℃ 30 分間恒温槽で加熱して補体成分を不活化します。特に血球系細胞や血管内皮細胞の培養には非働化をお奨めいたします。まず、冷凍保存してある血清を 37℃の恒温槽で溶解し、溶解後 56℃の恒温槽で血清全体の温度が均一になるように時々攪拌しながら 30 分間置きます。終了後、過剰の加熱を避けるためにすばやく氷冷します。分注後すぐに使用しない血清は-20℃以下で冷凍保存します。
細胞を継代するタイミングはいつが良いのでしょうか?
対数増殖期です。
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