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Bis-Trisポリアクリルアミドゲル電気泳動技術

Bis-Trisゲル技術には、従来のアクリルアミドゲルと比較して、泳動時間の短縮やバンドの分離能の向上など、SDS-PAGEを行う上で多くの利点があります。


ポリアクリルアミドゲルの化学的性質  

PAGEは不連続緩衝液系を使用しており、ゲルバッファーイオンはランニングバッファーイオンとは異なります。これら2つのイオンの電気泳動移動度の違いにより、電圧勾配が形成され、タンパク質がゲル中を移動します。Tris-Glycineゲル系は、最もよく使用されるPAGEシステムで、Tris-HClからなるゲルおよびトリス塩基とグリシンからなるランニングバッファーを使用します。Tris-Glycineゲルは、高アルカリ性環境で泳動するため、脱アミノ化やアルキル化などの好ましくないタンパク質修飾が発生するおそれがあります。その結果、Tris-Glycineゲルでタンパク質のバンドがゆがんだり、分離能が低下する可能性があります。

Bis-Trisゲル技術

一方、Bis-Trisゲルは、ゲルバッファーにBis-TrisとHClを使用し、ランニングバッファーにMOPSまたはMESを使用します。Bis-Trisゲルは中性pHで泳動するため、タンパク質修飾が最小限に抑えられ、ゲル泳動中のタンパク質の安定性が高まります。これにより、タンパク質バンドの分離能と精度が向上します。また、Bis-Trisゲルは、時間の経過とともに加水分解が生じるTris-Glycineゲルよりも有効期間が長くなります。Bis-Trisゲルは、MOPSまたはMESのいずれかをベースとするランニングバッファーと組み合わせられる柔軟性があります。これら2つのイオンの移動度の違いから、異なるタンパク質分離範囲が得られます。MESは低分子量(50 kDa未満)のタンパク質に使用し、MOPSは中~高分子量のタンパク質の分離に使用します。

Bis-Tris技術の特徴と利点。

図1.従来のTris-Glycineゲルと比較したBis-Tris技術の特徴と利点

Bis-Trisゲルでは、Tris-Glycineゲルよりシャープなバンドが認められる。

図2.Tris-Glycineゲル(左)とBis-Trisゲル(右)の比較。Tris-GlycineゲルとBis-Trisゲルを12%アクリルアミドでハンドキャストしてから、オーバーナイトで重合させた。これらのゲルに、同一のE. coli溶解物(レーン3~6)、mPAGE®未染色タンパク質スタンダード(レーン2・7)、およびmPAGE®カラータンパク質スタンダード(レーン1)をローディングした。ゲルを、Tris‐グリシンまたはMOPSのランニングバッファーで泳動し、ReadyBlue®タンパク質ゲル染色剤で1時間染色した後に脱イオン水で1時間脱染した。

Tris-GlycineバッファーとBis-Trisバッファーの比較

タンパク質調製に使用するサンプルバッファーの種類を考慮することも重要です。Tris-Glycineゲルの場合、通常Laemmliバッファーを使用し、負に帯電したSDSイオンでタンパク質を変性およびコーティングします。さらに変性を促すために、サンプルを100℃で煮沸します。Laemmliバッファーを100℃まで加熱すると、pHは強酸性になります。このような熱と酸性の組み合わせにより、特にAsp-Proペプチド結合において、タンパク質の切断が引き起こされることが示されています1。この結果、電気泳動中にタンパク質分解産物が生じます。一方、Bis-Trisゲルは、サンプル調製時にアルカリ性pHを維持するLDSサンプルバッファーを使用するため、70℃以上に加熱してタンパク質を完全に変性させる必要はありません。これにより、Asp-Proペプチド結合の切断が最小限に抑えられ、タンパク質本来の状態が保たれます。

タンパク質電気泳動用mPAGE® Bis-Trisプレキャストゲル 

mPAGE® Bis-Tris SDS-PAGEゲルシステムでは、高性能で非常に適した電気泳動分離を行うことができ、幅広い分子量において良好な分離能が得られます。mPAGE® Bis-Trisプレキャストゲルは、より多くのサンプルをローディングできるよう汎用性のあるデザインになっています。mPAGE® Bis-Trisプレキャストゲルは、10 x 8 cmのミニカセットフォーマットで、一般的なゲル電気泳動装置に適合します。 

mPAGE® Bis-Trisプレキャストゲルは、MOPSまたはMESランニングバッファーのみで使用できるようデザインされています。どのランニングバッファーを使用するかによって、得られる分離パターンは大きく異なります。MOPSバッファーは、高~中分子量のタンパク質の分離に適しています。一方、MESバッファーは、低分子量のタンパク質の分離に適しています。移動チャート(図3~7)を参照し、目的の分離範囲に適したゲルランニングバッファー系を決定してください。

Bis-TrisゲルとTris-Glycineゲルのタンパク質移動チャート。チャートは、8%ゲルの移動を示している:MOPSとMESのランニングバッファーを用いたmPAGE Bis-Trisプレキャストゲル、MOPSとMESのランニングバッファーを用いたmPAGE LUX Bis-Trisハンドキャストゲル、MOPSとMESのバッファーを用いたmPAGE TurboMixハンドキャストゲル、Tris-Glycineランニングバッファーを用いたTris-Glycineハンドキャストゲル。8%などの低いゲル濃度は、高分子量範囲での良好な分離に使用される。Bis-Trisゲルでのタンパク質の分離は、MESまたはMOPSのランニングバッファーを用いてさらに最適化できる。中~高分子量タンパク質の分離にはMOPSランニングバッファーが好まれ、中~低分子量タンパク質の分離にはMESランニングバッファーに利点がある。

図 3.8% mPAGE® Bis-Tris & Tris-Glycineゲルの移動チャート。分子量はキロダルトン(kDa)で表示。

Bis-TrisゲルとTris-Glycineゲルのタンパク質移動チャート。チャートは、10%の移動を示している:MOPSとMESのランニングバッファーを用いたmPAGE Bis-Trisプレキャストゲル、MOPSとMESのランニングバッファーを用いたmPAGE LUX Bis-Trisハンドキャストゲル、MOPSとMESのバッファーを用いたmPAGE TurboMixハンドキャストゲル、Tris-Glycineランニングバッファーを用いたTris-Glycineハンドキャストゲル。10%や12%などの中等度のゲル濃度は、分子量範囲にわたる幅広い分離に使用される。Bis-Trisゲルでのタンパク質の分離は、MESまたはMOPSのランニングバッファーを用いてさらに最適化できる。中~高分子量タンパク質の分離にはMOPSランニングバッファーが好まれ、中~低分子量タンパク質の分離にはMESランニングバッファーに利点がある。

図4.10% mPAGE® Bis-Tris & Tris-Glycineゲルの移動チャート。

Bis-TrisゲルとTris-Glycineゲルのタンパク質移動チャート。チャートは、12%ゲルの移動を示している:MOPSとMESのランニングバッファーを用いたmPAGE Bis-Trisプレキャストゲル、MOPSとMESのランニングバッファーを用いたmPAGE LUX Bis-Trisハンドキャストゲル、MOPSとMESのバッファーを用いたmPAGE TurboMixハンドキャストゲル、Tris-Glycineランニングバッファーを用いたTris-Glycineハンドキャストゲル。10%や12%などの中等度のゲル濃度は、分子量範囲にわたる幅広い分離に使用される。Bis-Trisゲルでのタンパク質の分離は、MESまたはMOPSのランニングバッファーを用いてさらに最適化できる。中~高分子量タンパク質の分離にはMOPSランニングバッファーが好まれ、中~低分子量タンパク質の分離にはMESランニングバッファーに利点がある。

図512% mPAGE® Bis-Tris & Tris-Glycineゲルの移動チャート。

13.5% mPAGE LUX Bis-Trisゲルのタンパク質移動チャート。このチャートは、MOPSおよびMESのランニングバッファーを用いた場合の移動を示している。13.5%など高いゲル濃度は、低分子量範囲での良好な分離に使用される。Bis-Trisゲルでのタンパク質の分離は、MESまたはMOPSのランニングバッファーを用いてさらに最適化できる。中~高分子量タンパク質の分離にはMOPSランニングバッファーが好まれ、中~低分子量タンパク質の分離にはMESランニングバッファーに利点がある。

図6.MOPSおよびMESのランニングバッファーを用いた13.5% mPAGE® Lux Bis-Trisゲルの移動チャート。

図には、MOPSおよびMESのランニングバッファーを用いた15% mPAGE<sup>®</sup> TurboMix Bis-Trisハンドキャストゲルのタンパク質移動が表示されている。MOPSバッファーを用いて分離したタンパク質は、MESバッファーを用いた場合と比べて、通常同じゲルケミストリーではゲル内での移動度が大きい。15%などの高いゲル濃度は、低分子量範囲での良好な分離に使用される。Bis-Trisゲルでのタンパク質の分離は、MESまたはMOPSのランニングバッファーを用いてさらに最適化できる。中~高分子量タンパク質の分離にはMOPSランニングバッファーが好まれ、中~低分子量タンパク質の分離にはMESランニングバッファーに利点がある。

図7.MOPSおよびMESのランニングバッファーを用いた15% mPAGE® TurboMix Bis-Trisゲルの移動チャート。

mPAGE® TurboMix™ Bis-Trisゲルキャスティングキット

mPAGE® TurboMix Bis-Trisゲルキャスティングキットは、分離溶液とスタッキング溶液で構成されています。これらの溶液は、ゲル調製ステップを簡素化し、試薬の無駄を最小限に抑えるように最適化されています。mPAGE® TurboMix溶液は、従来のキャスティング法やクイックキャスト法でも使用できます(図8)。

クイックキャスト法では、分離ゲルを注いだ直後にスタッキングゲルを注ぐことにより、ワンステップで重合を行います。 mPAGE® TurboMix分離溶液は、アクリルアミド濃度20%となっており、脱イオン水で希釈して使用します。このため、さまざまな濃度の分離ゲルを柔軟にキャストできます。 mPAGE® TurboMixスタッキング溶液は、アクリルアミド濃度4%となっており、過硫酸アンモニウム(APS)とN,N,N’,N’-テトラメチルエチレン-1,2-ジアミン(TEMED)を添加するのみです。 その他のタンパク質ゲル電気泳動リソースについては、ゲル電気泳動アプリケーションページをご覧ください。タンパク質分離試薬およびプロトコルのニーズについてまとめています。

TurboMix<sup>™</sup>クイックキャスト法

図8mPAGE® TurboMixクイックキャスト法では、5ステッププロセスによりポリアクリルアミドゲルの迅速なキャスティングが可能

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参考文献

1.
Robinson DR, Watts NR, Coombs DH. 1988. Heat cleavage of bacteriophage T4 gene 23 product produces two peptides previously identified as head proteins. J Virol. 62(5):1723-1729. https://doi.org/10.1128/jvi.62.5.1723-1729.1988